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見られていた…?
「ここ…こうして普通に通るところだから、俺」
そういえば…彼は仕事の前に珈琲大陸に寄っていたな…あ…
「コウさんのせいで…夫に浮気したのか?って疑われました…」
「うん?話が飛んだね…まあいいや。疑われた?俺のせい?どういうことかな?」
ホテルへ入るところを見られたという焦りから、心の底にあった不満を彼にぶつけた。
「…名前呼べって…コウさんが言ったのに…」
「ああ…ベッドの話?」
そう言われると…こんな話、知人にも親にも出来ないけど、本名かも分からない名前だけを知る相手には言えるのか…と何かが緩む。
「ヤりながら、呼んだんだ…ふーん…羨ましい旦那なだけだけど?」
「……いつもと違う呼び方で…浮気したのか?って…」
「嫉妬を煽る感じになって燃えたなら、そんなのもアリじゃない?浮気はしてない、で済むだろうし」
「煽る…?」
「…違う?なんて顔……どうした?」
彼の手がそっと私の頬に触れると
「してない…萎えた…だって…」
口にしたことのないような言葉を発した。一瞬の間があり、言葉の意味を理解したコウさんは
「おいで…フウコさんがそんな思いをすることない。魅力的だと自信を持って…」
と私の手を引きホテルに向かう。それが、一昨日のホテルでないことは分かったけれど、あとはカーッと首から上が火照り、自分の鼓動が耳なりのように聞こえているだけだった。
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