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「嫌ならしない…」
部屋に入ってすぐのところで、ゆっくりとコウさんの顔が近づき唇が唇をかすめる…
「しなくても…名前だけ呼んで欲しい…お願い…フウコさん」
どういう願望?
「…コウさん」
「さんは、いらない」
息のかかる距離だけれど、どこにも触れずにただ私を見つめる彼の熱っぽい瞳は、彼の熱望を語るようだ…
「コウ…」
「うん……もう一度…いい?」
こんなに人と見つめ合うことがこれまでにあったかな…
「…コウ」
「うん…もう一度…お願い…」
カーッと火照っていた熱がゆっくりとカラダ中を駆け巡り始めた気がして、慌てて振り払うように
「コウ」
と息を吐くと
「ありがとう、フウコさん…」
すっぽりと彼の腕の中へ…抱きしめられた。
「もう…こんななのにね、俺……フウコさんの声…きっと旦那さんは…奥さんがセクシー過ぎて、圧されて…飲み込まれてしまったんだよ」
柔らかく静かな声と対照的なカタマリが、彼のチノパンのジッパーよりずっと硬く私に当たる。
「自信を持って…また家で、呼んであげればいい…誘えばいいよ。こんなに素敵な女性を放っておく男はいない。大丈夫だよ」
「…ふふっ…お世辞でも…ありがとう。一昨日…たまたまなんだけど、この辺りで雨に降られて…びしょ濡れのすけすけ……でも一人で部屋で服を乾かしただけだった…」
「嘘だろ?」
「ううん…本当のこと。夫を裏切るつもりはないけれど……あまりにも生々しい姿だったのに触れもせずにって…夫と出来なかったことと続いて…ちょっとね…だからありがとう」
「…やっぱ……フウコさん…俺とシよ…」
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