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“そのあと、2番目の連絡先になってる俺に“お仕事中申し訳ない”と小さな声でかかって来た後ろで“ままぁ、ちえちゃんおしっこやってー”と亜優ちゃんの声がしてブチッと切れた…急いで家に入れてくれたんだと思う。すぐに掛かってきて、ママに連絡がつかなかったと聞いて、俺もかけたけど…どうした?千愛は中西さんにお願いしておいた”
私は夫の話を聞きながら言い訳を考えていた。
「幼稚園の時のママ友と会ってたんだけど、お話が弾んでちょっとお店を出るのが遅くなってしまったの…ごめんなさい。もう家の前まで帰ってきたけど…中西さんにもご迷惑を掛けてしまったわ…」
“それもそうだけど、千愛も心細かったと思う。初めてのことだったから”
「謝っておく。出張中にごめんなさい」
“それはいい、戻る”
はぁ…やってしまった…手に持つスマホと家の鍵をバッグの中で交換して、中西家のインターホンを押す。
“はぁい、あ、秋山さんっ。ここに千愛ちゃん、いますっ。お待ちください”
彼女は今の私と夫の電話を知らないから、私が千愛を探していると思っているのかもしれない。モニターに私を見つけて慌てている様子だ。
「秋山さん、お電話したんですが…勝手にごめんなさい。たまたま千愛ちゃんが玄関のドアをガタガタして、インターホンを鳴らしてってそこを往復しているところを見掛けたので…」
「いえ、私の方こそ、ご迷惑を掛けてすみません。本当に助かりました、ありがとうございます」
「お仕事中のご主人にも連絡入れてしまって…勝手におやつとかダメかな、とか、千愛ちゃんの居場所がパパかママには伝わっていないとマズイやろなぁって思ったんで…」
「今、主人と電話していました。ありがとうございます」
夫にまで電話しないで…とは言えない。中西さんは常識的な大人の行動をしただけだ。
「ママ…どこにいたの?」
玄関に置いたままのランドセルの横に立った千愛が、靴を履かずに私に聞く。インターホンの外にいる私は、大きな声を出すのもどうかと千愛に“帰ろう”と手招きした。
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