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「どこにいたの?家で寝てた?」
「えぇ?寝てない、寝てない」
「でも…家のどこにいた?」
靴を履く素振りなく、真っ直ぐ私を見る千愛の足元に亜優ちゃんが座って千愛のスニーカーに足を入れる。
「ちょっと出かけてたんだけど、帰る時間を間違えちゃって…ごめんね」
「ウソ」
「えっ?」
声が出たのは私で、中西さんも少し驚いた顔で千愛を見た。
「そんな…お化粧しないで出かけるのはウソだ」
千愛の言葉にチラッと私を見た中西さんが、すぐに
「亜優、千愛ちゃんに靴返してあげて。亜優も大きくなったらこんなん履こうな」
と話をそらして玄関に入る。
「…千愛、帰りましょ…パパもママのお出かけは知ってる…」
そこでやっと靴を履いた千愛は
「亜優ちゃんママ、ゼリーありがと。亜優ちゃん、バイバイ」
と出て来た。
「亜優と遊んでくれてありがとうね、千愛ちゃん」
「あそんだなぁーばいばーい」
二人に見送られた千愛は私を通り越して自分の家のドア前まで行くと
「鍵」
と、とても不機嫌に言う。私はもう一度中西さんにお礼を言ってから、急いで自分の家を開けて入った。
「本当にごめんね、千愛」
「ふーん」
その日の千愛はあまり話さず、ずっと不機嫌だった。
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