狼狽

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夫は千愛と出て行く前に 「先に寝てていいから」 と告げた。そして玄関ドアに手を掛けてから 「あ、昨日。誰のママと一緒だったんだ?」 と私を見る。 「あ…えっとね…何人かいて…」 「いいや。ランチはどこで?」 「T駅の近く」 T駅は珈琲大陸の駅よりひとつ向こうの大きな駅だ。 「へぇ…みんなで電車に乗って行ったんだ。ママが千愛のママ友とまたランチが出来るなんて、良かったな。しかも4時くらいまで話が弾むなんて…まだ連絡を取ってるって知らなかったけど友達は大切にした方がいい」 夫はニコッと笑ってからドアを開けると、千愛を先に通して自分も出た…パタン… 過去に私がママ友と揉めたことがあるのを夫は知っていて…通園バスのない幼稚園だから基本的にみんなこの地域の人で…昨日の言い訳は失敗したかな? ハッ……それどころではない…千愛に“パパもママのお出かけを知ってる”って言ったのに…今、千愛の前で夫が私のお出かけを知らなかったことを暴露したようなものだわ… 一人になった家で頭を抱える。 狼狽え以上に放心に近い…でも…夫は帰って来る。明日の土曜日は中西さんを誘っていて、日曜日には千愛を迎えに行く。 それなら、中西さんが誘いに応じてくれた方がいい。夫が招いた客を十分にもてなすわ。私も中西さんの奥さんとゆっくり話をしてみたいからちょうどいい。 そう思った私は、今日作る予定だったハンバーグの材料をミートローフにしようと決めた。
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