隣人

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私が千愛と歩いていたように、中西さんと亜優ちゃんも幼稚園まで歩いて行くことが多いようだ。亜優ちゃんの気分で、たまに自転車。 「おはようございます」 少し話をしてみようかと思い、中西さんが幼稚園から戻ってくる頃を見計らって表の掃き掃除をしていたら、彼女から挨拶があった。 「おはようございます、おかえりなさい。亜優ちゃん、もうすっかり幼稚園に慣れた?」 私が手を止めて聞く間、彼女は体も顔もこちらへ向けているが、手探りで斜め掛けしていた小さなバッグを開けて家の鍵を取り出した。 「はい、毎朝騒がしくてご迷惑お掛けしました。すみません」 明るく笑いながらペコリと頭を下げた中西さんに 「全然迷惑なんかじゃないわよ。大声で泣くわけでもないしね」 と応えると 「玄関に座ってささやかな抵抗を続けてたんです…私も主人も大学と就職がこっちやったんで普通に話が出来ますけど、5年間関西勤務のうちに亜優は生まれて育ってるんで、関西丸出しなんですよね」 と返ってきた。あなたの言う“普通に話ができる”というのは微妙だけれどね…そのイントネーションは関西ですよ… 「アオハル幼稚園のお友達で“関西弁はテレビの人が喋る”という子がいたんですって。それで初日にばーっと亜優が大勢に囲まれちゃって、ちょっとしばらくビビってました」 「子ども同士って、大人じゃ思いも寄らないことが起こるわね」 「ほんと驚きましたけど、何とか落ち着きました」 そう言ってニコッと笑った中西さんは 「失礼します」 と続けてドアを開けると、ペコリ…家の中へ入って行った。
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