顚落

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「ハルくん…なんか見られたんやって…どーしよっ?」 「どーする?怖いなぁ、直美」 「きゃーっ…」 と手を握り合う中西夫妻に、笑いながら 「漫才なの?」 とさらに笑う夫。3人の笑い声が私を苛つかせる中 「で…風子さんは何を目撃されたんでしょう?」 私の向かいに座る直美さんが、少し前のめりになって聞いてくる。 「直美さん…」 「はい?」 「既婚者合コンからホテル…行ってるでしょ?私、見たの……ずいぶん迷ったんだけれど、仲良くやってる旦那さんと可愛い亜優ちゃんがいるんだから、思い切って忠告しようと思って」 皆が呼吸も止めたのかと思うくらい、空気が存在しないような沈黙が流れる。 「そんなこと無責任に言うもんじゃないよ、ママ。だいたいどこで見た?見間違えてるんじゃないか?」 夫が言葉を発したことで動き出した空気の中で、中西夫妻は二人揃ってしかめっ面になっていた。 「隣の駅の近くよ」 「…風子さん……どうして知ってるの?」 あら…直美さんがあっさりと認めたわね。 「あまりにもいつもいつも、直美さんが着替えて出掛けるから気になってね」 「………気になったからって…直美をつけたってことですか?」 「中西さんのお気持ちは察しますけど、そんな怖い顔しないでください。何も知らないままよりずっといいと思いますよ?」 「ママは直美さんを追い掛けて…自分もその既婚者合コンとやらに参加したってことか?」
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