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「…そんなっ…いい加減なこと言わないで」
火曜から金曜まで出張だった夫…北陸へと言っていた通りお土産も石川のものだった。どうして?
「こんな話…俺がいい加減に言えると思うのか?俺でなくても…冗談でホテルに行っただろ、なんて言わない。よね…中西さん?」
「はい…もちろん。愛する妻を疑うのもツラいし…自分で確かめるのもツラいと…シリアスでしかないと思います…」
「うん…やっぱり千愛を守ってやらないといけないからね、俺は父親として…千愛は俺が命に代えても守るべき存在で、それが出来る存在だから」
そう言った夫は
「千愛がママの嘘に傷ついている…俺も、嘘に裏切りを知った…残念だ」
と肩を落とす。
「千愛…が…?」
「そうだ。千愛にこれ以上傷ついて欲しくない…傷つけるわけにはいかない。だから俺は本当のことを知りたい」
「千愛は何て…?」
「…風子さん…ダメです、それは……口を挟んで申し訳ないですけど……木曜日は私も会ったんで…千愛ちゃんがパパに何と言ったかに合わせて喋っちゃいけないと思います……嘘に嘘が重なりそうで怖い…あのとき千愛ちゃんが“ウソ”と口にした…それはわかってるんだから…もうウソは…取り返しがつかなくなるのが怖い…」
今、夫の前で正論を私に突き付けるなんて…怖いなどと震えるフリで、私を落としにかかるマウント女…あなたの、心配のフリした嘲笑はわかってるのよ。
私だって、千愛を傷つけたくない。大切だもの。だから…今回は嘘をつき通す。
「木曜日は言った通りランチだったの。火曜日って…何のこと?」
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