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「もう一度…最初から聞く。イエスかノーでいい…既婚者合コンへの参加は一度」
「…はい」
「木曜日はママ友とランチ」
「はい…」
「火曜日、ホテルへ行った」
「それが…どこからそんな話になるの?」
「千愛が知ってる」
「「えっ?」」
驚きの声をあげたのは中西夫妻で…私は、夫がどんな嘘を考えたのだろうかと思った。
「千愛ちゃん…学校のはず…」
「やのに…ママがホテルって…知ってる?」
中西夫妻はそう言って夫を見つめた。
「昨日、出張からなるべく早く帰ろうと思って…千愛のお迎えに行ってやりたかったんだ。きっと家に向かって歩きながら“今日は鍵開いてるかな?”“ママ、いるかな?”って不安だと思ったからね。不安なく、寄り道せず、真っ直ぐ家に帰って来いよって言いたかった…ハハッ…俺の顔を見た途端にダッシュで抱きついてきたよ“パパいたっ!”ってね…」
そうだったのか…
「で、ママもいるよって伝えて歩いたんだけど“ママ、普通の匂いだった?”って聞くんだよ、俺に…すごく不安そうに…」
「「匂い?」」
「うん、俺も聞きました…匂いって?そしたら“火曜と昨日、ママがシャンプーか洗濯か石鹸か知らないけど、うちと違う匂いで嫌だった…”って千愛が言った…“朝は普通だったのに、学校から帰ったら知らない匂いの人だった…”と…」
言葉がでなかった…直美さんは両手で顔を覆うように固まり、その肩を中西さんがゆっくりと撫でる。
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