隣人

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千愛の通う小学校は、水曜日には全学年5時間授業しかなく、3時前に千愛が帰ってくる。その他の曜日は4時前の帰宅だ。 私は近くの公民館にて、水曜日10時のフラワーアレンジメント教室に参加している。公民館で開催されている教室は、営利目的ではないので花材の実費で受講出来るから、無理なく楽しんで1年続けられて、いま2年目の受講が始まったばかりの春。 「こんにちは」 「こ〜んにちは〜」 マチの広いフラワー用の袋に完成したアレンジメントを花器ごと入れて運ぶことに気を取られながら歩いていると、向かいから元気な声がする。 もう数歩で家の前というところで、手を繋いで歩く中西さんと亜優ちゃんが挨拶してくれたんだ。 「こんにちは。亜優ちゃん、おかえり。水曜だから半日なのね」 「そうなんです。3時間くらいでお迎えなんですよね。お花ですか?」 「そう。公民館のアレンジメント教室へ行ってるの」 袋に目をやった中西さんに続いて亜優ちゃんが 「ちゅーりっぷやん、ほら、ママみてみ。これな、ちゅーりっぷ」 と指を指して得意げに言う。 「そうやな、チューリップ。きれいやなぁ」 「中西さんも良かったら教室、見に来てね。いつでも体験は出来るから私に言ってくれたら先生に連絡して準備してもらえるわ」 「ありがとうございます。いろいろと余裕が出来た時にはお願いするかもしれません」 そう応える中西さんの手をグイグイと自分の家へ引っ張る亜優ちゃん… 「ママ、さんどいっちつくるんやろ?はよかえろ」 「あ、うん。亜優、千愛ちゃんママにバイバイは?失礼します」 「バーイバーイッ」 いろいろと余裕が出来た時に…ねぇ…今はいろいろと余裕がない?いろいろって…お金とか時間よね…
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