隣人

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うちと並んでいるベランダに一度も洗濯物が出ない中西家は洗濯乾燥機を使っているのだろう、と洗濯物を取り込みながら思う。 私は洗濯物を干すのも、取り込むのも当たり前だと思ってやってきたけれど…忙しいワーキングマザーたちの当たり前とは違うことは理解できるわ。 「ただいま〜公園行って来る〜」 千愛の声に急いで玄関まで行くと 「おかえり。1回入ってお手紙出してからね」 「わかってる、わかってるって。でもないよ、今日は」 朝着ていたパーカーを腰に巻いた千愛が洗面所で手を洗い、ランドセルをリビングにポンと置くとすぐに出て行こうとする。 「はい。これくらい飲んでいけば?」 「うん」 パックのコーヒー牛乳をグラスに入れて千愛に渡し 「誰と?」 「はぁちゃんと…あといろいろ…たきくんとか…スイミングまでだけって」 「千愛も英語よ」 「うん。いってきまーす」 「車に気をつけてねっ!」 飛び出すような娘を追い掛けて表へ出た。 「亜優ちゃん、バイバーイ!」 「ばいばぁい…ちえちゃんどこいくん?」 「こーえんっ」 「あははっ…元気やねぇ、千愛ちゃん」 自転車から亜優ちゃんを下ろしながら笑う中西さんは、スーパーから帰ったところのようだ。昼間の幼稚園帰りと同じロンTにワークパンツ…幼稚園が半日の水曜日は出掛けないようだけれど、何度か平日に着替えて出掛けるのよね… 「あ、はいはーい、ハルくん?ちょっと今、表でややこしい…っと…」 スマホを耳に荷物を持った彼女は 「あとでかけ直しまーす」 と通話をすぐに終えて玄関を開けた。
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