ろく

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時間は夜の19時を回ったところだ、店内には数組のお客さんと、あとは何組か予約が入っている。 そろそろ混み始めてくる時間なので、入っているオーダーを捌きつつ、空いてるグラスやお皿などを下げていく。 程なくして、店内に来客を知らせる音が鳴り響く。それに 「いらっしゃいませ〜」 と、反射的に声を出し、くるり振り向けば8人組の団体のお客様だった。きっと予約の人たちだろうとサラッと顔を見渡せば、なんとそこに深月くんの姿があるではないか。 え、まじかよ。 まさかの偶然にひとり目をぱちくりさせる。 そんなあたしにひとりの男性が「すいません、予約の竹下です。」と、名前を名乗ってきた。 それに、ハッと我に返り、急いで顔面に笑顔を貼り付け「…ご予約の竹下様ですね。お待ちしておりました。お席へご案内いたします。」と、接客モードへと切り替える。 ちらり、予約表を確認してから席へと案内する。 やたらと後ろが気になったけど振り向くわけにもいかず、しっかり前を見据えて奥のソファ席へと案内した。 「こちらになります。」 にこり、笑顔でそう言えば 「きゃー、すてきー」「かわいいお店だねっ」 と、なにやらきゃっきゃっうふふと、可愛らしい女子の声が聞こえてくる。 これはあれか?合コンもしくは知人の集まりか? 残念ながらあたしの大学内の顔見知りは限られているので、この人たちが果たしてどうなのかは判断致しかねた。 ぞろぞろと席へと着いていくのをちらり目で追いつつ、全員が席についたことを確認すると「では、オーダー決まりましたらそちらのタッチパネルから入力をお願いします。」そう言ってその場を離れようと踵を返した。 「雪乃ちゃん」 不意にあたしを呼び止める声がする。 それに戻りかけていた足を止め、声のした方へと振り返る。 「…、深月くん。ひさしぶりだね。」 内心、声かけてよかったんだ。と少しホッとしつつ、笑顔で応答した。 「今日ゼミの飲み会なんだ。場所聞いた時まさかとは思ったんだけど、やっぱり雪乃ちゃんのバイト先だったんだね。一応さっきLI◯Eも送ったんだけど気付いた?」 と、話しかけてくる。 「え、あ、ごめん。見てなかった。」 そっか、連絡してくれてたのか。 スマホは持っていると連絡先などを聞かれたときにかわすのが面倒くさくなるので基本バッグの中に入れっぱなしにしていた。
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