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「…失礼します。これ、もしよかったら、サービスです。」
そう言ってテーブルへと先ほどのフィッシュ&チップスを置く。
「えっ、まじ?いいんすか??」「やったー、あざーす。」と、端々から声が上がる。
それに深月くんも反応し
「えっ、ごめん、雪乃ちゃん、これ貰っちゃっていいの?」
と申し訳なさそうにされる。
「あー、うん。なんか店長が知り合いなんだろってサービスしてくれたみたいで。よかったらみんなで食べて。」
あははは〜、だから気にしないで、と笑って返す。
「ん、ありがと。」
それに、素敵な笑顔でお礼を言われ、久しぶりの深月くんのスマイルに心が癒される。
先程まで荒んでいた心が嘘のようだ。
すると、がしゃんっ、とグラスが倒れた音と共に
「あ、ばかっ、ちょっと静香!」
と、これまたなんだか聞き覚えのある名前が耳へと入ってくる。
はっ、そうだ静香じゃん!
あのドヤ顔どこかで見たことあったと思ったらあの性悪静香じゃん!すっかり忘れてた。
名前を思い出せたことに少しスッキリとしつつ、あたしは今バイト中の身である。
見れば、机の上は倒れたグラスのせいでお酒が溢れてしまっていた
「大丈夫ですか?今おしぼり持ってくるので、待っててください。」
そう言って席を一旦離れた。
それにしてもさっきから深月くんと話してるとなんだか邪魔が入るな。そう思い、もしやさっきのグラスも静香がワザとやったのでは?と謎に確信めいた答えが導き出される。
さすが性悪静香、期待を裏切らない働きぶりだ。
なんだったら今日のこの店の予約も、静香が決めたのでは?とあらぬ考えが頭をよぎる。
てか、絶対そうじゃん。女って怖いとつくづく感じた瞬間だった。
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