680人が本棚に入れています
本棚に追加
おしぼりを大量に抱えて戻ると
「あーん、冷たぁい。足にかかったぁ」
と、うるさいくらいに静香が主張している。
仕方なく「これ、使ってください。」と、おしぼりを差し出しだすと、それをちらり見るだけで受け取ろうとしない静香。
おい、どうした。冷たいんじゃないのかよ。と
心の中のあたしが静香へとつっこむ。
「あの、使わないんですか?」
一向に受け取る気配がないので、もう一度声をかけるがそれもシカトされた。
ので、あっそ、ならもう知らね。と
テーブルの上にドサッと、おしぼりを置き
「ここに置いておくので、よかったら使ってください。」
そう一言だけ伝え、せっせと濡れたテーブルの上を片付ける。
すると、深月くんも「ごめんね、手伝うよ。」とあたしの隣へとやってきた。
「え、あ、いいよいいよ、深月くん汚れちゃうかもだし。」
そう言って、断ろうとしたが
「ちょっとでも雪乃ちゃんと一緒にいたいから
やらせて?」
と、さっきまでのあたしのブルーな気持ちをたった一言で瞬時に塗り替えてくれた。
やばい、胸のトキメキが止まらない。
「…ありがとう。」
なんとか感謝の言葉を絞り出し、中断していた片付けを再開する。
「ねぇ、雪乃ちゃん今日は何時終わり?」
粗方テーブルを拭き終わったころ、深月くんがあたしへと話しかける
「えっと、、、今日は0時までだよ。」
「そっか。まだまだだね。頑張ってね。」
「…ありがとう。」
ちょっとだけ、この後誘ってくれるのかなって期待したけど、もしかしたらこの中の誰かと約束してるのかもしれない。
お願いだから静香だけはやめて。と心の中のあたしが深月くんへと訴える。
が、声に出さない限りそんなこと伝わるはずもないし、そもそもあたしはそんな事言える立場ではない。
はぁ、やめよ。考えただけで先ほどのブルーな気持ちが蘇り、むしろ今の方が悪化している気すらした。
最初のコメントを投稿しよう!