ろく

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なんとなく、この場からはやく離れたくて、手伝ってくれたことにお礼を言うと足早に席を離れた。 時刻は23時を回ったあたり、深月くんたちが会計へと立ち上がる。 あたしはこの後の光景を見たくなかったので、レジを他の人にお願いしバッシングへと向かった。 空いたグラスやお皿をトレーへと重ねていく。 「おねーさん♪」 すると後ろから、明らかに酔っているであろう、なんとも陽気な声があたしへとかけられる。 「…はい、?」 一応勤務中なので、無視することもできずそれに笑顔で対応する。 「ふはは、かわいいねぇ〜♪ちょっとさぁ、連絡先教えてよぉ〜」 やたらハイテンションで絡まれ顔には出さなかったが うわぁ、だるいやつじゃん…。と、心の中でゲンナリする。 「あ〜、ごめんなさい。そうゆうの、禁止されてるんです。」 とりあえず、常套句を使って断りを入れると一旦止めていた手をまた動かし、テーブルの上をどんどんと片付けていく。が、 「えぇ、そんなわけないでしょ〜。いいじゃん連絡先くらい教えてくれたってさぁ?」 さすが酔っ払い。聞き分けが悪い。 「すみません、本当に禁止されてて。」 と、若干引き攣っているであろう笑顔で再度断る。 すると後ろから 「ゆっきー、店長がバックで呼んでるみたい。それ俺が変わるよ。」 と、力が話しかけきた。 内心、ナイス力!と全力で感謝しつつ。 「ごめん、ありがとう。」とあたしの横に並んで片付けはじめた力へ小声で感謝を伝えてから 「あのすみません。そういうことなので、失礼します。」 ぺこり、酔っ払いへと頭を下げて、なんとかその場を退散することに成功した。
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