ろく

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戻ってきたあたしに、店長が声をかける。 「雪乃ちゃんさっき絡まれてたみたいだけど大丈夫だった?力が俺に任せろ!って息巻いて助けに行ったみたいだったけどさ。」 そう言って、はははっと白い歯を見せながら笑う。 「あ、はい。力が上手い事やってくれました。」 「ならよかったよ。なんかあったらすぐ言ってね。」 「ありがとうございます。」 上がりまでの残り約1時間、溜まっていた洗い物を食洗機にぶちこんだり、カウンターでお客さんの相手をしたりと忙しなく働いているとあっという間に時間となった。 「お先に失礼します。」 ラストまでのスタッフに挨拶をしてから更衣室で着替えを済ませ、裏口から店を出た。 駅までの道をとぼとぼと1人歩く。 まだ週中の水曜日だというのに、どこの飲食店もそれなりに繁盛しているようだ。 うるさいキャッチなどを交わすべく、耳にイヤホンを装着しようとした手をパッと誰かに掴まれる。 「っ、え、なにっ、、、、。」 「雪乃ちゃん、、、!はぁ、よかった見つかって。まさかのすれ違い?俺店の前で待ってたんだけどいつ出てきた?」 そこには1時間ほど前に店を出て行ったはずの深月くんが少し息を切らしながら、あたしの腕を掴んで、あっつ。などと言いながら、着ているTシャツをパタパタさせ、無駄に色気を垂れ流していた。 え、えっろ、、、。 いや、そこじゃないだろ。と自分で自分につっこむ。 「…え、深月くん?あれ、なんでここに、、、?」 深月くんの突然の出現に脳が追いつかない、先ほど何か言っていたセリフもよく聞いてなかった。
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