ろく

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今日はカウンター付近で常連さんや、おひとり様客の相手をメインで担当していたあたしの元へ、1人の招かれざる客がやってきた。 「西さん。こんばんは。」 そう言って空いてるカウンター席へと座る静香に、内心、お呼びじゃねえよ。と毒づくけど、今はバイト中だ、そして静香はお客様である。 あたしは笑顔で接客をしなければならない。 顔に外面の笑顔を貼り付け「こんばんは、いらっしゃいませ。」と言葉を返す。 さすがに何しに来たのかなんてそんな野暮なことは聞かないけど、話があるならバイトが終わってからにして欲しい。 だってあたしは今仕事中なのだ。プライベートなことをこの場で話すのは控えたい。 そんなことをあたしが思っている事など梅雨知らず 「とりあえず、カルアミルクひとつ。」 と、なんとも可愛らしいご注文をいただいた。 それに笑顔で「かしこまりました。」と返して、カルアミルクを作る。 「お待たせしました。」 作ったそれを静香の前へと差し出せば「どーも。」となんとも愛想のない言葉が返ってきた。 「じゃあ、また何かあったら呼んでください。」そう言って静香の前からフェイドアウトしようとしたけど 「ちょっと待って。西さんに話あるの。」 と、不適な笑みを浮かべながら、あたしの作ったカルアミルクへと口をつける。
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