ろく

17/20
前へ
/159ページ
次へ
「…、すみません。プライベートのことなら後にしてもらってもいいですか?終わるのあと2時間後とかですけど。」 あたしは今あなたと喋るつもりはありません。 そう意思表示をしたつもりだったのに 「いいじゃん別に、あたしの話くらい聞いてくれても。西さんはただ黙ってあたしの話を聞いてくれればいいからさ。それならいいでしょ?」と なにやらこの場を離れることを許してはくれないようだ。 ならあたしの時給分静香が払えよ?と思ったけど言い返したら面倒くさそうなので黙っておいた。 「…、なら、5分以内でおねがいしますね?」 お前に使える時間はないんだからな?という意味も込めて、ニッコリ笑顔でそう言ってやれば、それに気を悪くしたのか眉間に皺を寄せて不快感を隠そうともしない静香。さすがである。 しかし、返事がないので 「もう5分きってますけど、大丈夫ですか?」 と、追い討ちおかけでやれば「チッ」と舌打ちをしてからやっと口を開き始めた。 「まあもう大体言いたいことの予想はついてると思うけど、深月の周りうろつくの目障りだからやめてくれない?あたしは入学してからずっと深月一筋でここまでやってきたの。なのに、急に現れた顔だけの女に横取りされるとか許せない。別にそこまで好きなわけじゃないんでしょ?あ、それとも深月えっち上手だから抜け出せなくなっちゃった?でもね、勘違いしちゃだめだよ?深月はみんなに優しいの、自分だけが特別だなんて思わないでよね。」 一気にそう、捲し立てるように言葉を吐き出すと、ふぅ、と一息つきながらカルアミルクに手を伸ばした。 それを黙って聞いていたあたしはというと 「…。」 よくもまあこんなにテンプレ満載なセリフを長々と言えたもんだな。と、感心してしまって言葉も出なかった。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

683人が本棚に入れています
本棚に追加