なな

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多分力はあたしの好きな人が深月くんだってことをなんとなくこの前のあたしの態度かなにかで察していたのだろう。 そして、ついこの間の静香の襲来も見ていたようだったし、そんな2人が一緒にいるところをあたしより先に見つけてしまった為、それをあたしに見せまいと急にこんな事を言い出したのか。と、さっきまで謎だった力の進路変更にひとり納得した。 「ふっ、ありがとね、力。じゃあ、少しだけ遠まりして帰ろっか?」 そんな力の気遣いに感謝しつつも、このまま深月くんたちとすれ違う度胸のないあたしはこんな時ばかり力をいいように利用する。 あたしの言葉に 「だな!俺あっちに上手いドーナツ屋があるの知ってるぜ?」 なんて、こんな時間にドーナツ屋はやってないんじゃないかな?と、思いながらも今はただ黙って力の後へと着いていく。 一度だけ気になって、後ろを振り返ったけれど、もう2人の姿は見えなくなっていた。 それに、はぁ、、。と、力にバレないよう小さくため息を吐き出すと「ねえ、やっぱりこの時間にドーナツはなく無い?」 極めて普段通りに、いや、少しだけいつもよりも明るかったかもしれない。そんなトーンで力へと話しかけた。 あたしのその言葉に「えっ!?確かに。じゃあアイスとか?」なんて、そんなあたしのちょっとした変化に気づいてるのか気づいてないのか分からないけど、何も言わずに普段通りに接してくれる力が今のあたしには凄く有り難かった。
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