なな

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予約しているお店の時間も迫ってきているので、深月くんと並んで2人歩く。 相変わらずあたしをエスコートするかの様に腰に回された手に、今日で最後かもしれないし。と、思い残すことがないよう 「深月くん、あの、、手繋ぐのは、だめ?」 と、歩きながら斜め上にある深月くんを少し見上げながらそんなお伺いを立てる。 突然のあたしの申し出に少し驚いた表情をみせたけど、すぐにそれを優しい笑顔へと変え 「もちろん。そんな可愛いお願いならいくらでもどうぞ?」 と、たったそれだけのことで凄く嬉しそうな顔をする。そしてあたしの左手を取ると、きゅっと指を絡めて所謂恋人繋ぎというやつをしてくれる深月くん。続けて 「雪乃ちゃんの手って、ちっさくて可愛いよね。」 そう言って繋がれたら手を少し上へと持ち上げると、そこへ顔を寄せ、ちゅっ、とあたしの手の甲へ柔らかなキスを落とす 「っ、深月くんの手が大きいだけだよ。」 なんて、まるで王子様のようなそれにドキドキしながらも普通の言葉を返した。 深月くん、やはりとんでもねえ。 こっちが油断して気を抜いた瞬間、確実に亡き者にされる。 ゲームで言うところの最強のラスボス(深月くん)を前にあたしの決心が揺らいでしまわぬ様、気を引き締めなおした。
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