さん

3/19
前へ
/159ページ
次へ
「…ん、ありがと」 振り向き、少し眠そうな声でふにゃりお礼を言う まだ少し瞼が重い、瞬きをゆっくり繰り返す 「眠くなっちゃったね」 そんな様子を見て、くすっ、と笑うとあたしの目尻にキスを落とす 「…ふふっ、くすぐったいよ」 「ん、ごめん、でもかわいくて」 そしてもう一度ちゅっと、同じ場所へとキスを落とす あたしもそんな深月くんの顔へとスリスリと頬擦りをする ……あれ?あたし何してるんだ? てか、なんだこの付き合いたてのカップルみたいなやりとりは やっと覚醒した頭が急速にあたしを正気にさせる 「っ、も、もうお終い!ほら、深月くんもはやくお風呂入ってきなよ!」 「…なんだ、残念。ゆるゆるな雪乃ちゃんはもうおしまい?」 「お、おしまい!今のは幻!忘れて!お願い」 うわぁ、やってしまった、寝ぼけていたとはいえ恥ずかしすぎる 「だめ、忘れてあげない、またあとでお願いね?」 顔を赤くして恥ずかしがるあたしに追い打ちをかけるように、そう囁く くっ、そうだった深月くんってこういう人じゃん!基本的にはめちゃくちゃに優しい、けど根っこの部分はきっとすごく意地悪なのだ 「っ、やだ」 そのふた文字を絞り出すのが今のあたしには精一杯だった
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

684人が本棚に入れています
本棚に追加