さん

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突き返された諭吉が風に吹かれ寂しそうにゆらゆらと揺れている、そんな諭吉を見つめるあたしの腕を深月くんがパシリ、掴む そして少し遠慮がちに 「お金はいいからさ、またこうやって2人で会ってくれる?」 そう言って、あたしの腕を握る手にぎゅっと力をこめた それは、セフレとして? 頭の中で浮かんだ台詞は口には出せなかった だって、聞くまでもない。十中八九そうだ。 「も、ちろん!今度は韓国料理屋さん行こうね」 と、昨夜の会話を思い出し笑顔で返す。 最初の言葉を出すのに、少し詰まってしまった、不自然じゃなかっただろうか? あたしの返答によかった、と小さく囁くと 「そうだね、約束したもんね。連絡するよ」 と、ニコリ笑顔で微笑む深月くん、同時に掴んでいたあたしの腕をそっと離した 「ん、わかった。でもこのお金はもらって欲しいんだけど…。」 それとこれはやはり話が違う、ジッと深月くんを見つめる あたしの視線にしばらく考えて 「んー、じゃあ、韓国料理奢ってくれる?それでチャラにしよう」 名案だとでもいうように、深月くんが言う 本当に払わせてくれるか、疑問だ。 しかしこれでは埒が開かないので 「…うーん、わかった。」と納得して見せる 続けてそのまま「じゃあ、あたし行くね」そう言って深月くんに別れを告げると改札へと足を進める 後ろから「気をつけて帰ってね」と深月くんの声がする、それに返事代わりに小さく手を振り返すと改札をくぐりその場を後にした
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