よん

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このままここにいてはダメだ。 自分の中に湧き上がってくるこの感情の正体に気づいてはいるけど、今はそれをうまく消化できそうもない。 そう思い「あ、さっきはどーも。」と、先ほどの女1にあなたの事なんてなんとも思ってませんよ。という意味も込めて笑顔で挨拶をした後、「じゃあ、あたしもう行くね。」ともう一度深月くんへと視線を戻して笑ってみせる。 心の中で、ふぅ、っとため息を吐き 足を前へと進めた。 大学の正門をちょうど出たところで「雪乃ちゃん」と先ほど別れたはずの声があたしを呼ぶ それに驚き、振り返る え、何で…? 「よかった、追いついて。」 そう言って少し肩で息をする深月くん どうやら走って追いかけてきたようだった。 「え、どーしたの?なんか急用、とか…?」 いや、この短時間で急用はないだろ。 と心の中で自分につっこむ。 でも思い当たる節が何もない 頭にはクエスチョンマークが乱立している。 「いや…、せっかく雪乃ちゃんに会えたのにこれでバイバイかと思ったら、なんか思わず追いかけてきちゃった。」 ごめんね、予定とかあったよね。と続ける な、なにそれ、そんなの期待しちゃうやつじゃん…!! ほんのり顔が赤くなるのが自分でも分かった 「…あ、えっと、このあとバイトはあるんだけどまだちょっと時間が早くて、適当にその辺で時間潰そうと思ってたところなんだけど、、、」 チラリ、深月くんの様子を伺う 「そっか。ならそれまで一緒にいてもいい?」 そう言って優しい笑みを浮かべ、あたしの手を取る それにギュッと心臓を鷲掴みされるような感覚に陥るけど「…もちろん。」と、なんとか言葉を絞り出し、深月くんに握られた手にキュッと小さく力を込め控えめに握り返した うぅ、、、なんて思わせぶりな男なんだ橘深月。 あたしの気持ちを弄んで楽しいか、、、。 あたしは楽しい。
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