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あたしの手を引いたまま今日の飲み会の居酒屋へと到着すると繋がれていた手をすっと離し「はい、これ。」と、手持ちのバッグを手渡される。 それを「ありがとう。」と受け取る。 あたしの言葉にニコリ微笑んでから 「あんまり飲みすぎちゃダメだよ?じゃあ、終わる時間が分かったら連絡してね」 そう言ってあっさり立ち去っていく深月くん。 あたしはその背中を少しの間ぼーっと見つめてから「はぁ、、、。」とひとつ大きな溜息を吐き店の中へと入っていった。 飲み会開始から1時間半程たった頃 「ゆきちゃん、一回でいいから俺とデートしてくれない?それでダメなら諦めるからさぁ」 同じ学部の金子(かねこ)先輩がさっきからやたらとあたしを口説いてくる。深月くんほどではないと思うが、人気のある先輩らしい。(柚葉調べより。) 薄情な柚葉はさっさと違う席へと移動し、なにやら楽しそうに盛り上がっている。 「ごめんなさい。無理です。」 深月くんと出会う前のあたしだったらありでした。でも今は他の人のことを考える余裕はない。 金子先輩からの誘いを躊躇なく切り捨てる。が 「いいね、そーゆうの超燃える」 なにやら超燃えているらしい。 断っても意味ないのつら。 「…先輩、メンタルつよつよですね。」 「ん〜?だって彼氏いないんでしょ?なら俺にもまだチャンスあるじゃん」 そう言ってあたしの目をじっと見つめて微笑む。 「たぶん、無理だと思いますけど…。」 そう断りつつも、先ほど言われた先輩の言葉が頭の中をリピートする。 彼氏、たしかに彼氏はいない。 でも深月くんは…?やることはやってるし、かわいいとか、たくさん褒めてくれる、今日だってわざわざ迎えにきてくれるって言ってるし、すごく特別扱いしてくれているように思う。でも肝心な言葉は一度だって言ってくれたことはない。やっぱりセフレ、なんだろうな…。 そんなことを考え始めたらもともと低かったテンションがさらに急降下した。
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