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「無理を言わないでくれ。今更、医者なんて、、」
渋谷課長も困惑していた。
その渋谷課長に、生が言い募った。
「誠、お前なら、今からでも医者になれる。兄弟の中で一番頭がいいし、冷静沈着だ。医者に向いている」
「私は今の県庁職員の仕事が好きだし満足している。今更、医者になんてなるつもりはない」
渋谷課長は、きっぱり断った。
それを聞いていた佳世も、生に言った。
「そうよ。生さん、あなたが医師に向いているわ。でも、跡を継がなくてはいけないのに、わざわざ危険な場所で働く必要なんてないわ」
生は、難しい顔をして考え込んだ。
「しかし、自分の人生は自分で決めたいんだ。人生は一度っきりだ。本当に後悔しないやりたいことをする人生にしたいんだ」
生は、そうきっぱりと言った。
それを聞いた佳世の表情が変わった。
「、、分かったわ、、。それほど、あなたの意思が固いなら、もう別れましょう、私たち。私は、ずっとこれから心配し続ける人生なんて嫌よ。あなたがいう通り、人生は一度きりなんだから」
え、、。
波瑠は、困惑した。
二人は、愛し合っていながら別れるのか、、。
しかし、渋谷課長が、お義父さんの後を継がないつもりなので、生さんが継ぐしかなく、生さんは国境なき医師団には入れないことになる。
つまり、自分の生きたい人生を生きられない、、。
それは、どうなんだろう、、。
波瑠も考え込んでしまった。
その時、渋谷課長が言った。
「、、私が将来的に継げば、生兄さんは生きたい人生が生きられるのか?」
えええっ?
渋谷課長、どういうつもり?!
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