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圭は、椿総理大臣が後援会のホテルから出てくるのを、待機して車の中で待ちながら、考えていた。
椿総理大臣の暗殺予告は、首相官邸の執務室の壁に紙で貼られていたのだ。
『辞めなければ、殺す』
赤い字で、そう書かれていた。
首相官邸に入れるのは、ごく一部の人間だ。
一般人は、入れない。
ということは、内部の人間の犯行だということだ。
それは、椿総理も同意見だった。
でも、誰かはわからない、、。
「わたしは、政敵が多いから」
椿総理はそう言った。
確かに、まだ若く、しかも女性である椿総理に反対する人間は多かった。
その精力的な活動にも、反発する声もあった。
だが、圭を含め、椿総理を支持している者も、また多くいた。
つまり、人気があるのだ。
人間的に魅力的だった。
圭も、総理大臣とSPという関係を超えて、好意を持っていることに、自分でも気付いていた。
しかし、、。
先のない想いだった。
総理大臣とSP、、。
ありえない、、。
圭は、首を振って、その想いを振り払った。
その時、椿総理が別のSPに守られながら、ホテルの裏玄関に現れた。
秘密裏に裏玄関を使っていたのだ。
このことは、ごく内部の人間しか知らない。
圭は車を降りて、椿総理の元へ向かった。
その時だった。
いきなり、銃声がした。
そして、椿総理に付いていたSPが、血飛沫と共に倒れた。
椿総理は、呆然と立ち尽くしている。
危ない!
「伏せてっ!」
そう叫びながら、圭は全力で駆け寄ったが、二発目の弾丸は、椿総理ではなく、圭に向かって発射されたものだった。
圭の左肩が弾け、血飛沫が上がった。
「渋谷君っ!」
椿総理が、悲鳴のような叫び声を上げて、圭を庇うように圭の前に立ち塞がった。
そして、三発目の銃声がした。
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