東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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負傷した椿総理を乗せて、圭が運転する黒塗りの高級車が、渋谷医院の玄関に横付けされた。 渋谷医院の前には、生と、生から話を聞いた渋谷課長と波瑠が待っていた。 圭は、運転席から降りると、後部座席の椿総理を抱き抱えて、渋谷医院に入った。 「生兄さん、椿総理を頼む! 右太腿を銃弾が貫通してる」 「ああ、分かった。すぐに治療にかかる」 生はそう言って、椿総理に向かって安心させるように頷いた。 「椿総理大臣、圭の兄の外科医をしている渋谷生と言います。これから、傷を切開して縫いますが、銃弾は貫通しているので、そんなに大きな手術にはならないと思います」 「ええ、分かりました。でも、先に渋谷君を治療してあげて下さい。彼は肩を撃たれています。彼の方が重症ですから」 圭は、首を振って、言った。 「こんな怪我は大したことではありません。それより、椿総理大臣が大事です。貴女は、この国の要なのです。どんな時も、万全の体調でいてもらわなくては、、」 生が、聞いていて言った。 「とにかく、先ずは、椿総理を診ます。圭は、後でいいな」 圭は、大きく頷いた。 「ああ、頼む。生兄さん」 波瑠は、このやりとりを、ハラハラしながら見ていた。 だが、テレビでしか見たことのない椿総理大臣を直に見て、興奮していた。 えええ、テレビで観るより、美人で素敵、、。 握手して欲しい、、。 、、波瑠は、やはり、どんな時でも波瑠であった、、。 その椿総理の手術は、短時間で終わり、圭の方の手当ても済んだ。 とりあえず、もう、夜になっていたので、椿総理と圭は渋谷医院に隣接する実家に一泊することになった。 椿総理は、渋谷家の実家に興味津々の様子だった。 椿総理、圭、生、渋谷課長は、食卓に着き、とりあえず、夕食を取ることになった。 そして、波瑠が張り切って、得意の牡蠣メシを作って、みんなの前に出した。 椿総理は、一口食べて、目を丸くした。 「美味しい! こんな美味しい牡蠣メシはよく行く高級料亭でも食べたことはないわ!」 波瑠は、あの椿総理に褒められて、鼻高々だった。 そして、夕飯も終わり、それぞれが休むことになった。 波瑠と椿総理は同じ和室の客間に寝ることになって、波瑠が布団を引いた。 「なんか、こんな時なのに、ワクワクするわね、、修学旅行みたいだわ」 椿総理が、嬉しそうに言った。 椿総理は、波瑠が思っていたのと全然違って、気さくで明るかった。 波瑠も、嬉しくなった。 あの椿総理と、女子トーク出来るかも、、。 波瑠もワクワクした。
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