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枕を並べて、波瑠と椿総理は横になった。
波瑠は、ずっと思っていたことを口にした。
「圭さんってカッコいいですよね。映画のボディガードのケビン・コスナーみたい」
椿総理は、ふふ、と笑った。
「ケビン・コスナーより素敵よ。さっきお姫様抱っこされて、『エンダーーー!』ってホイットニー・ヒューストンが流れたわ」
「ええーっ! いいなあ!」
波瑠と椿総理は笑い合った。
波瑠は、椿総理がどんどん好きになった。
なので、訊いた。
「椿総理は、ご結婚はされないんですか? 、、やっぱり、圭さんが好きなんですよね? SPとは付き合ったり、結婚しちゃいけないとかあるんですか?」
椿総理は、不意に真面目な表情になった。
「波瑠さん、、私ね、、誰にも言ってないことがあるの」
「えっ?」
椿総理はつらそうな顔になった。
「私、養子なの。本当の家族は、私が五才の時、心中してみんな死んだの、、」
「え、、」
波瑠は、言葉を失った。
椿総理は、来ていたパジャマ代わりのTシャツの裾をめくって、腹部を波瑠に見せた。
そこには、肌が引きつれた酷い火傷の跡があった。
波瑠は、息を呑んだ。
「父の会社が倒産して、母がうつ病になって、妹が二人いたんだけど、母が家に放火して四人とも死んだの。私だけが、助かったの、、」
「そんな、、」
波瑠は、あまりのひどい話に、涙が出てきた。
そんな波瑠に椿総理は言った。
「波瑠さん、、。この世には、地獄より酷いことがある、、。そして、そんな人生を生きてる人がいる、、。私は、そんな人を一人でも助けたい。そう決意して、政治家になったの。この一生を政治に捧げるつもり。だから、結婚は考えてないわ」
椿総理は、キッパリと言った。
「渋谷君のことは好き。でも、恋愛はしない」
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