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「恋愛はしない」
その椿総理の決意とも言える言葉で、楽しかった女子トークは終わった。
「もう、寝ましょう」
椿総理は、そう言って、目を閉じた。
波瑠は、仕方なく電気を消した。
だが、波瑠は眠れなかった。
きっと、圭さんも椿総理のことが好きだ。
なのに、一緒になれないなんて、なんだかとても悲しい、、。
悶々とした夜も明けた。
圭は、再びSPとして、椿総理を護衛し車で首相官邸へと向かった。
だが、首相官邸に着くと、すぐに、大倉官房長官から、直々の呼び出しを受けた。
大倉官房長官は、まだ若い椿総理の右腕として、その長年の政治経験で椿総理を支える存在だった。
いわば、娘と父親のようだった。
椿総理が、負傷した、という知らせを受けて、大倉官房長官は、激怒していた。
官房長官室に呼び出された圭は、大倉官房長官から激しい叱責を受けた。
「君は、SPの中でも一番若いが、一番優秀だと聞いていた。それが、何だ! このザマは!」
「、、申し訳ありません、、」
「椿総理は君を庇って負傷したそうじゃないか! もう、君は椿総理の警護から外れてもらう!」
「え、、」
「もう決定事項だ! 下がりなさい!」
圭は、反論するまもなく部屋を出て行かざるを得なかった。
しかし、出て行こうとした時、ドアの近くの書類棚から、赤い文字の紙がチラリと見えた。
「殺」という字とともに、その文字の独特の赤色には、見覚えがあった。
あの、椿総理の執務室に貼られていた暗殺予告の文字と同じ色だ。
まさか、、!
圭は、恐ろしいことに気付いた。
椿総理が、総理大臣を辞めれば、次の総理は、大倉官房長官だと言われている。
しかし、大倉官房長官が、犯人なのか、、。
信じられない。
だが、犯人は政府内部の人間であることは、間違いない。
圭は、大倉官房長官が犯人であるならば、証拠を掴む必要がある、と思った。
しかし、それは、とても難しいことだ。
ふと、次男の兄、弁護士の命の知り合いに、東城拓巳というやり手の検事がいるらしいことを思い出した。
何か、力になってくれるかもしれない。
命に話して、東城の力を借りよう、、、。
そう考えた。
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