東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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だが、圭は、まず、椿総理に話そうと決意した。 身近にある危険を知っておいて欲しかったからだ。 しかし、椿総理に圭が疑惑を話すと、椿総理は顔色を変えて怒った。 「渋谷君! いくら渋谷君だって、許せない話だわ! 大倉官房長官は、ずっと昔から、私が言葉に尽くせないくらいお世話になって、支えて来てくれたのよ! だから、私はここまで来れたのよ!」 もう、椿総理は、圭の言い分に耳を貸さなかった。 「もしも、そんな噂、一つでもたてたら、金輪際、許さないわよ!」 捨て台詞のようなことまで言われた。 圭は、表沙汰にならないように動くしかなくなってしまった。 圭は、仕方なく、命のマンションを訪ねた。 とりあえず、命に自分の説を聞いてもらおうと思ったのだ。 しかし、急いでいたあまり、約束をせずに行ったので、先に客がいた。 その客に、圭は玄関口で出くわした。 スリーピース姿で見栄えのいい背の高い男だったが、圭は驚いた。 その男と、命が濃厚なキスをしていたからだ。 二人は、圭に気が付くと、慌てて離れた。 命は、圭に気まずそうに紹介した。 「圭、、。検事の東城拓巳さんだ」 「えっ?」 圭は驚いた。 命が、ゲイであることは知っていた。 命の今までの男の恋人にも会ったことはあった。 しかし、弁護士の命が、検事と付き合っているのか、、。 圭は、呆れたが、自分の要件を思い出して、かえって都合がいいことに気付いた。 命と東城が恋人同士ならば、自分の相談にも親身になってくれるだろう、、。 「東城さん、聞いていただきたい、重大なお話があるんです、、」 圭は、現職総理大臣の暗殺を、官房長官が企てているかもしれない、という前代未聞の大事件を話した。 今まであったことを順を追って話し終わった圭に、東城は言った。 「まず、あり得ない話だな」 「えっ? でも、証拠が、、」 「その暗殺予告の文字と同じものが、たとえ、官房長官の部屋にあったとしても、それが官房長官が書いたものとは思えないな」 「でも、椿総理が辞めれば、次期総理大臣は、大倉官房長官です」 「だとしても、大倉官房長官が、総理大臣になることを望んでいる人間は、周りにたくさんいるんだ。第一に、秘書などはそうだろう」 「えっ? 秘書?」 圭は、思いもしなかった。
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