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波瑠は、自分の家に帰っていた。
商店街にある新築のマンションだ。
元は、モデルルームだった部屋を借りている。
それには、訳があった。
数ヶ月前、それまで住んでいたマンションが火事になったのだ。
波瑠は、当時身重だったが、渋谷課長が助けてくれて、無事に逃げ出せた。
だが、住むところがなく困っていたら、日頃、渋谷課長に恩義を感じている商店街の人々が、新築のマンションのモデルルームを提供してくれたのだ。
渋谷課長は、いつも、どんな時も、誠実で真面目なので、人々から尊敬されている。
もちろん、波瑠も尊敬している。
その渋谷課長が、県庁の仕事から帰って来た。
第一に、可愛い息子の真也の顔を見に、寝室へ行った。
難産で産まれた真也だったが、すくすくと育っている。
渋谷課長似なので、将来は、頭の良いイケメンに育つであろう、と波瑠は安心している。
渋谷課長が、リビングに来た。
「おかえりなさい。お疲れ様でした」
波瑠が、労いの言葉を掛けると、渋谷課長が応えた。
「ああ、ありがとう。ただいま」
その時、渋谷課長のスーツのポケットから、スマホの着信音がした。
渋谷課長が、出た。
「はい。、、えっ? 命兄さんが?! ああ、分かった。すぐに行く。父さんと同じ病院だな?」
渋谷課長は、そう言うと、すぐに電話を切って、波瑠に向かって、真剣な顔で言った。
「命兄さんが、マンションから転落した、、」
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