東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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波瑠と渋谷課長は、動転しながら、病院へ向かった。 義父の貴一郎と同じ総合病院だ。 救急搬送されたそうだ。 波瑠は、ドキドキと胸の動悸が収まらなかった。 マンションから転落?! 事故なのか、、。 それとも、、考えたくないが、自殺を図った? 命さんに何があったのか、、。 渋谷課長と乗ったタクシーの中で、波瑠の頭の中はぐるぐると、考えが渦巻いていた。 タクシーは病院へ着き、波瑠と渋谷課長は、救急治療室に向かった。 命さんが、今、治療を受けている。 命さんのマンションの部屋のベランダからの転落なら、確か十六階のはずだ。 、、助かるのか、、。 波瑠は、救急治療室の前で、へたり込んで、祈った。 どうか、どうか、神様、命さんを助けてください! その願いが届いたように、救急治療室のドアが開いた。 ストレッチャーに横たわって、白い毛布が掛けられた命が出て来た。 命の瞳は閉じられていた。 波瑠は、駆け寄った。 「命さん! 命さん!」 波瑠が、泣きながら叫ぶと、命は閉じていた目を少し開けた。 「命さん!」 「、、波瑠さ、、ん」 命さんが、生きていた! 波瑠は、腰が砕けた。 座り込んで、安堵のあまり、大声で泣いてしまった。 渋谷課長が、その波瑠の肩を抱いて、命に付き添って救急治療室から出て来た医師に訊いた。 「兄は、大丈夫なのでしょうか? マンションの十六階から転落したと聞いたんですが、、」 医師は、穏やかに言った。 「そうですが、幸いなことに、十階の踊り場に落られたんです。運が良かった。ケガは、脳震盪と右脚の骨折だけです」 波瑠は、それを訊いて泣きながら、神様はいるんだと思った。 まだ死ぬべきじゃない人は、必ず助かるのだ。
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