東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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しかし、波瑠を迎えに来た圭を見て、波瑠はビックリした。 圭は、ハンチング帽を被り、口髭を付けて変装していた。 まるで別人のようで、初老の男性を思わせた。 「波瑠さん、びっくりさせてすまない、、。大倉官房長官は知り合いだから、変装をしたんだ。総理大臣付のSPの僕が、後援会に出席なんて変だろう?」 「えっ? じゃあ、あたしも変装しないといけないですか? セーラームーンのコスプレなら出来ますよ!」 波瑠は、ウキウキしながら訊いた。 圭は、一瞬、絶句した、、。 「、、い、いや、波瑠さんは普通にしててくれればいいよ。一般人だから、、」 圭は、そう答えたが、波瑠に夫婦の役を頼んだのは、大きな間違いだったかもしれないと、後悔していた、、。 しかし、他に頼めそうな女性はいない、、。 仕方ない、、。 圭は、波瑠と共に、大倉官房長官が、支持者の集まる講演会のホテルへ向かった。 だが、途中で地元のスーパーに寄った。 波瑠はどうしても、今日だけ大安売りのケチャップをたくさん買っておきたかったのだ。 こんな時も、波瑠は主婦であった、、。 それから、後援会のホテルに着いた。 流石に、次期総理の官房長官ともなると、その規模は大きかった。 人数が多いから、圭もどうにか、それに紛れて後援会の招待状を手に入れることが出来たのだ。 受付で、招待状を渡し、圭と波瑠は会場へ入った。 大きな高級広間だった。 圭は、以前相談した命の恋人の検事、東城の意見で秘書を疑っていた。 通常、官房長官の秘書には、私設秘書と公設秘書がいる。 私設秘書の方が、大倉官房長官との関係が密なので、圭は、はじめ私設秘書を疑った。 しかし、いくら調べても怪しいところは見つからなかった。 そこで、公設秘書の方も調べることにしたのだった。 公設秘書には、政務担当秘書官と事務担当秘書官が五名いた。 経済産業省、財務省、外務省、警察庁、内閣府の課長級の人材が登用されている。 圭は、その事務担当秘書官の五名を調べてみた。 なかでも、一番疑わしかったのが、警察庁出向の三上譲治という秘書官だった。 大倉官房長官を崇拝しており、なおかつ現場警察官としての経験もあり、銃の扱いにも慣れている。 椿総理が、銃撃されたことからも、圭は、三上を疑っていたのだった。 他の秘書官は、外務省の秘書官が女性である以外は、エリートの中年男性で、これといって疑わしいところはなかった。 その疑っている三上が、この後援会に出席するという情報を得ていた。 他には、外務省の女性秘書官、外川美鈴も出席するらしい。 圭は、会場で、三上を探した。 三上は、後援会の参加者に挨拶をして回っていた。 圭と波瑠のところにも来た。 「え、、と、貴方様は、、?」 圭が慌てて言った。 「ああ、祖父が後援会の招待状をいただいていたのですが、来れなくなって、代理で来た中田と言います」 「そうですか、わざわざすみません。こちらは、、?」 そう言って、三上が、波瑠を見た。 「わ、わたしは妻の恵子です」 波瑠は、ドキドキしながら、圭から言われていた偽名を名乗った。
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