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「波瑠ッーー!」
渋谷課長が、血溜まりの中へ倒れる波瑠に向かって叫んだ。
波瑠は、倒れたまま、泣きながら震える手を渋谷課長に伸ばした。
「し、、しぶや、、かちょう、、」
「波瑠!」
渋谷課長は、波瑠に駆け寄って、その血まみれの手を握った。
波瑠は、遠くなりそうな意識の中で、思った。
ああ、あたし、死ぬんだ、、。
でも、、。
でも、死ぬってそんなに怖くない。
思っていたみたいに痛くも苦しくもない。
きっと、神経が麻痺したのね、、。
それに、渋谷課長より先に死ねる。
渋谷課長が死ぬのを見なくてもいい、、。
そして、念願の、愛する渋谷課長に手を握られながら死ねるのだ。
こんなに理想の死に方があるだろうか、、。
「し、、しぶや、、かちょう、、あたし、、しあわせ、、でした。しぶやかちょうと、、であえて、、ほんとうに、、よかった、、」
「波瑠、、」
渋谷課長が、怪訝げに眉をしかめた。
「トマト臭い、、」
「えっ?」
「波瑠、、。これは、血ではない。トマトケチャップだ。大量にトマトケチャップを買ったのだろう、、」
えええええっ!
ト、トマトケチャップ?!
「えっ? ということは、、、あたし、撃たれたんじゃないんですか?!」
「ああ、撃たれたのは、君が持っていた持っていたショッピングバッグだ、、」
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