東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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しかし、銃弾は発射されなかった。 男は慌てて、猟銃を確認した。 不具合が生じたようだ。 圭は、それを見ると男の元をへ走り、猟銃を掴むと奪い取って、男を取り押さえた。 波瑠はホッとした。 椿総理の暗殺事件は解決したのだ。 しかし、そうはならなかった。 「だらしないわね! 何ヘマしてるのよ!」 そう、女の声がした。 波瑠が、その声の方を見ると、椿総理と同じ年くらいの女が、銃を手に立っていた。 「外川美鈴!」 圭が叫んだ。 外川美鈴といえば、外務省から出向しているという女性秘書官だ。 「美鈴、、すまない」 圭に取り押さえられている男が言った。 男は、外川美鈴の知り合いのようだ。 もしかして、夫だろうか、、。 波瑠は、そう思ったが、よく訳が分からなかった。 しかし、外川美鈴が、銃口を椿総理に向けて叫んだ。 「椿翔子! あんたは、今日死ぬのよ!」 「美鈴、、!」 椿総理が、呆然と言った。 「美鈴、あなたが犯人なの?!」 「ええ、そうよ! 翔子! あなたに総理大臣なんて相応しくない。あたしの方がもっと政治家に向いてるわ!」 椿総理と外川美鈴は、深い知り合いのようだ。 外川美鈴は、続けた。 「翔子、あなたが政治家への道を駆け上がって、総理大臣にまで上り詰めていくのを見るのが、ずっと悔しくてたまらなかった。あたしの方が優秀なのに!」 椿総理は、その外川美鈴を、じっと見つめた。 そして、静かに言った。 「美鈴、、あなたに、この国を幸せにできる覚悟はあるの?」 「ええ、あたしは外務省にトップの成績で入ったし、誰よりも優秀なのよ!」 「美鈴、総理大臣に求められているのは、優秀さじゃない。国民を幸せにしたいという覚悟よ」 そう言うと、椿総理は上半身の服を脱ぎ出した。 「椿総理?! 何してるんですか?!」 圭が驚いて叫んだ。 構わず、椿総理は下着姿になった。 波瑠はびっくりしたが、もっと驚いたのは、椿総理の上半身が火傷のケロイドの跡で覆われていたからだ。 以前、お腹の火傷の跡は見せてもらったことがあった。 しかし、全身にあったのだ。 それを見た、圭も外川美鈴も息を呑んだ。 「美鈴、、私は病気で苦しんだ母親に焼き殺されるところだった、、。とても辛かった、、。でも、この運命は変えられない。ならば、この経験を活かしたいと思った。私のように苦しんでいる人を、一人でも助けたい、、。もし、一人でも助けられるならば、私は再び業火に焼かれてもいい、、。そう思って総理大臣の仕事をしているわ。あなたに、この覚悟はあるの?!」 外川美鈴の表情が変わった。 落胆し、落ち込んだ。 「翔子、、やっぱり、あなたには勝てない、、」 外川美鈴は、持っていた銃を捨てた。
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