東城拓巳(トウジョウ タクミ・検事)

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生と佳世が別れて、一ヶ月が経った頃、生の正式な大学病院の退職が決まり、生は、国境なき医師団に合流するための準備を済ませた。 そして、いよいよ紛争地帯へ旅立つ時が来た。 「生兄さん、そんなに急がなくても、せめて父さんの意識が戻ってから行ったらどうなんだ?」 渋谷課長は、国際空港で、生に言った。 波瑠と渋谷課長は、生を見送るため、空港に来ていた。 「父さんの意識はいつ戻るかわからない、、。そうこうしているうちに、紛争地域では、罪もない人々が怪我をして苦しんでいる、、。僕は、もう待てないんだ」 結局、渋谷医院の後継は、未定のままだった。 渋谷課長が将来的に継ぐと言う話も、保留のままだ。 空港のアナウンスが、生の乗る飛行機の搭乗を案内していた。 「じゃあ、行ってくるよ。誠、波瑠さん。お父さんのことは、頼む」 そう、生は、告げると、待合室の椅子から立ち上がった。 「生さん!」 前方のロビーから、佳世が現れた。 「佳世、、どうして、、?」 生は、苦しそうに、佳世を見た。 「生さん、わたし、、やっぱり生さんが好き、、。他の人じゃ、ダメなの、、。幸せになれないの」 佳世は、泣きながら言った。 「わたし、待ってる、、ずっと待ってるから、絶対に無事に帰ってきて!」 生は、佳世に近寄ると、抱き締めた。 「佳世、、。僕も佳世が好きだ。必ず無事に戻るから、待っててくれ、、」 佳世は、泣きながら、何度も頷いた。 その佳世に、生は告げた。 「佳世、、人間はいつまで経っても戦争を繰り返す愚かな生き物だが、こうして、佳世のように待っててくれる人もいる、、。きっと、人間はいつか分かるはずだ。人の愛情こそが、全てを救うと、、」 生は、そう言葉を残すと、旅立った。
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