87人が本棚に入れています
本棚に追加
生を見送った後、波瑠と渋谷課長は貴一郎が入院している病院へ行った。
病室に入って、二人で、昏睡状態で眠っている貴一郎の顔を覗き込んで見た。
すると!
貴一郎が、いきなりパチっと目を開けた。
「きゃー!」
波瑠は、びっくりして思わず悲鳴を上げてしまった。
渋谷課長も、驚いて言葉が出ないようだった。
そして、貴一郎は、波瑠と渋谷課長を見ると、大きな欠伸をして、言った。
「あー、よく寝た」
ええっ?!
ね、寝た?!
昏睡状態だったはずだ。
そんな訳はない。
医学的に昏睡状態だったのだ。
「と、父さん、大丈夫なのか?」
渋谷課長が、珍しく動揺しながら、訊いた。
波瑠も訊いた。
「お義父さん、本当に寝てただけなんですか?!」
「ああ、最近、病院の仕事が忙しくて疲れていたからな、、。ああ、誠、波瑠さん、久しぶりだな。元気そうで良かった」
貴一郎は、何事もなかったように、そう言うと、尋ねた。
「圭は、SPを辞めて総理大臣と結婚して、命は、ラッキョウ農家を恋人と継ぐために鳥取に移住して、生は、大学病院を辞めて国境なき医師団に入ったんだろう?」
えええっ?!
なんで、知ってるの?!
「お、お義父さん、どうしてそれを?!」
「おしゃべりな看護師がいて、いちいち耳元で話しかけてくれてたんだ。意識が戻るようにと、、」
貴一郎は、そう言うと、渋谷課長を見た。
「誠、渋谷医院は、お前に継いでもらう気はない。私が一代で建てた病院だ。私の代で終わらせる」
渋谷課長は、驚いた。
「それでいいのか? 父さん」
「ああ。お前には、県庁職員という大事な仕事があるだろう。好きな仕事は辞めるんじゃない」
、、ということは、、。
波瑠は、考えた。
つまり、あたしたちの生活は、元通りということになる。
お義父さんは、大丈夫みたいだし、お義兄さんたちも、それぞれの新しい人生を歩み始めている。
波瑠は、今回のいろいろあったことを思い出して、大きなため息を吐いた。
あーあ、大変だった!
けれど、みんなが幸せに向かって歩き出している。
あたしも、元の渋谷課長との幸せな生活に戻るのだ。
とにかく、良かった!!!
波瑠は、そう思った。
『旦那様💘がお医者さんになります!』
happy end🌸
最初のコメントを投稿しよう!