四男・誠(マコト・県庁職員)

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「渋谷君、ボディガードっていう映画、知ってる?」 椿総理が、政府専用車の中で、圭に訊いた。 圭は、助手席に座り、椿総理は、後部座席にいた。 「はい。昔、観たことがあります」 「そう、、。有名な映画だものね」 「その映画が何か?」 「いいえ、、何だか、ラストはどうだったか、忘れてしまったから」 「確か、ハッピーエンドでしたよ」 「そう、、。良かった」 圭は思った。 椿総理は、平静を装って、世間話をしようとしているが、本当は怯えてる、、。 総理大臣と言っても、たかが自分より七つ上だけの女性なのだ。 「渋谷君、言っておくけど、私は怖いなんて思ってないから」 圭は、思っていたことが見透かされたようで、ドキリとした。 「私には、果たすべき国民との約束がいっぱいある。それを、全部残さず果たせる自信が私にはある。だから、渋谷君、あなたは、死んでも私を守るのよ。たとえ、ハッピーエンドにならなくても」 椿総理は、そう一気に言うと、窓の外に視線を向けた。 そして、そのまま言った。 「渋谷君が、もし死んだら、その死は決して無駄にはしないわ。その何十倍、いえ、、何万倍にもして、私は人の命を救い続けるわ」 圭は、椿総理の強い想いを感じた。 何としても、椿総理を守ってみせる。 たとえ、本当に死んでも、、。 圭は、心に誓った。
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