国定

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国定

 入学前の私は、学業で負けるなんて思いもしなかった。実際は、とんでもないと己の慢心をすぐ悟ることとなった。  特に雄国班には、同じく高卒で入学した国定と秋山という二人がいた。私はこの二人に、敵わなかった。  国定はちょっとスマートな印象の、どこかランドレフ教授と似た空気を持っていた。  こういう男は、女に不自由しないんだろうなと思うルックスで、同僚の女子二人のうちひとりが気に入っているようだった。頭も切れるので、わざわざ聞きにくる他班の女子も多かった。  そつなく、さらりと、それでいて不可侵領域をきっちり持っているそんな男だったが、なぜか私には自分から声をかけてきた。  「望月。合気道を教えてくれ。」  「え⁈私?」  「俺、出来ないことが許せない(たち)なんだ。」  パパが、私の合気道の先生だった。パパはやたらと強かったので気づかなかったが、私はかなり強いらしい。  それから、国定とはスムーズに話しができるようになった。非言語的アプローチが、良かったのだろうか。  また女子から非難を受けるかと思ったら、そうはならず。国定の女子扱いが上回っていたからか、逆にカースト上位扱いとなった。  まったく、呆れる。
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