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そして小人は俺にしか見えないらしい。
同僚が泊まりに来た時ちょうど荷物が届いていたが、友人は段ボールから飛び出た小さいオカンに全く気がついていないようだった。
飛び出したオカンは同僚の存在に気が付き、「嫌やわ、はよ言うてぇ!」とモジモジしてミカンの間に隠れてしまったが。
飲みの席で「小人を見たことがあるか」と聞いてみたが皆の反応は薄く、「小人 目撃」などとネットで検索をかけても『小さいおじさん』の情報ぐらいしかなく、これは自分だけが認識できる現象なのだとわかった。
「次帰ってくるのは法事か……嫁さんになる子紹介してくれる時でええでな」
俺が社会人1年目の時の盆休みに帰省すると、オカンがそう言い放った。
「帰ってくるにも電車代ようけかかるで、嫁さんや孫連れてくる時まで貯めとって。母ちゃん仕事あるでアンタ帰ってきたところで構えへんから。母ちゃんのことは心配せんでええでな。ありがたいことに普段からようしてもらえる人がようけおるで。それにアンタもまだ稼ぎそんな無いやろ。元気にしとってもらったらそれでええわ」
少し寂しく感じたが、確かに帰省は時間も金もかかる。
せめてもの思いで、盆と正月には「世話になっとる人と食べて」と肉を送るようにした。
「こんなんせんでええのに」と毎度言われるが、肉を送る度にオカンは友人たちを招いて焼肉パーティを催していることを、小さいオカンから聞いて俺は知っている。
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