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金曜午後9時、職場から帰宅。
俺は一人暮らしのマンションに備え付けられている宅配ロッカーから、幅目一杯に収納された段ボールを引きずり出す。
ずしっと感じる重みから、今回は米が入っていると想定する。
無言のまま自室に入り、リビングの中央で段ボールのガムテープを引き剥がす。
―――さぁ、来るぞ、来るぞ。
そっと段ボールの蓋を開けると……
「りょうちゃん、お疲れさーーーーん!」と、手のひらサイズのオカン(母)が飛び出してきた。
「嫌ぁ、アンタまた遅ぅまで仕事しとったんとちゃう?ええ加減にせなあかんよ」と小さいオカンは腕組みして段ボールの縁で仁王立ちし、勝手に喋り出す。
「いや、そうは言っても……」とつい反論してしまうが、こちらの声はオカンに届かない。
俺の声には反応せず「ほれほれ、開けて」とオカンが半開きの段ボールの中を指差し、手招きする。
ピョン、とオカンは段ボールの中に戻り、俺が中を覗き込むのを待つ。
「これな、道の駅でめっちゃ美味しかってん。『海鮮汁の具』。一緒に味噌も送ったで、これで味噌汁飲みなぁ。米も炊いたらちゃんとした朝ご飯になるで」と海鮮汁の具の袋の上で忙しなく動くオカン。
「ほんで、次や」とオカンがその場で駆け足するので、小さいオカンに気を使いつつ海鮮汁の具とその下のインスタント味噌汁の袋を段ボールから出す。
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