1年 冬

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※嘔吐表現あり あの景色がザザザっと頭の中に流れる。 グラウンドで行われてる体育祭の喧騒をよそに、俺は校舎の廊下の真ん中で1人四つん這いになっていた。 上手く力が入らない。呼吸も上手くできない。あたまいたい。やばい吐きそう こうなるまで薬飲まなかったのありえないって…教室に置いてきたのミスったな… 自分1人しかいないことに不安感が増し、自責の念に苛まれる。さらにどんどんネガティブになり、諦めの心さえ芽生えてくる。 1人でいけるとか思わず先生とか連れてこれば良かったな…… 「志摩…?」 廊下の奥から俺を呼ぶ声がする。 この状況を見られるのはまずい。だけど誰かが来てくれたことにほっとした。 嬉しくて顔を上げようとするが、気持ち悪くて顔を上げられない。誰だろう…? 「志摩!!大丈夫か!」 「やま……し…ろ……くん…?」 走って俺の背中をさすってくれたのは、黒髪メガネで高身長なクラスメイトの山代くんだった。 1回も話したことない俺を助けに来てくれたのは有難いんだけど… 食道に何かがせり上がってくる感覚がくる。 ちょっともうやばい あかんやつやこれ 「う゛ぇぇ…ぇぇ……ハッう゛うぉぇぇぇ………」 山代くんのズボンに盛大にぶちまき、俺は意識を手放した。 あの事件の後、すぐに謝りに行ったら許してくれたんだっけ。 山ちゃん本当にまじで優しすぎる。 あの事があってから俺の体調を気にしてくれたし。 激優男山ちゃんは俺と会うと必ず体調チェックしてくれて、そこから俺からも友達として話すようにもなった。 気づいた時には普段のノリで山代くんから山ちゃん呼びに変わってたけど、真面目系の山ちゃんも特に気にした様子もないし、俺は距離が縮んだみたいで嬉しかった。 尚且つ初めての友達だったからもっと仲良くなれたらいいなーとか思ってた。 この感情を自覚したのはいつだったか。 俺がまた記憶の海に潜ろうとしていた時。 生徒会室のドアがキイッと開いた。
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