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憂鬱な始業式を終え、生徒が体育館から疎に出て行く。
そのうち残ったのは俺ら生徒会だけだった。
周りはすぐに片付けに取り掛かったが、俺はでっかいため息をついて、その場にしゃがみ込んだ。
始業式とかのイベントは生徒にとって最高の機会なんだろうけど、俺にとっちゃだるい・つらい・しんどいの三連コンボだ。
記憶にも残したくない様々な不潔な言葉と、熱狂的な視線を受けてまで、立ってニコニコしていた俺を誰か褒めて欲しい。
イメージのためにも笑顔を取り繕っていたが、これは些か精神がきつい。
毎度のことながら、他のメンバーの精神どうなってんの?
会長や副会長のゆき先輩ならともかく、あのしんぺいくんですら表情がぴくりとも動かなかった。
これが幼少から培われた能力か……
片付けの邪魔にならないように、端の方に移動してしゃがんでいると、肩を2回優しく叩かれた。
「今回は長いですね」
ゆき先輩が水のペットボトルを差し出しながら声をかけてくれた。
そのペットボトルを受け取りながら、俺の中のスイッチを切り替える。
「あはは〜…ごめんね?またへたばっちゃって」
「いつものことですので構いませんが…まだ慣れませんか?」
心配そうに眉をハの字にして聞いてくれるのは有難いんだけど、慣れないとかの理由じゃないから罪悪感がある。
そもそも、このイベントに慣れることは今後一生無いだろう。
「慣れるまで頑張らなきゃね」
「無理はしないでくださいよ」
「ははっお母さんみたい」
一瞬呆気にとられたようなゆき先輩の顔をしっかり見てから、俺はモップを持ってる会長の方に逃げた。
「誰が…………誰がお母さんですって!!??」
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