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私は少しの間の後、一言だけ答えてその場を去った。
「…人違いです」
パーティー会場で、すっかり明るさを取り戻した人混みの中を、私は歩いて行く。すると、しばらく歩いた頃。
「おい」
ガっと乱暴に横から右腕を掴まれ、私は驚いた。振り返ると、賢人が鋭い太眉を吊り上げ、厳しい顔でこちらを見ていた。ただでさえ鬱屈している顔に機嫌を損なった際に見せるこの手の猛禽類のような表情を見て、私は咄嗟に肩を竦める。
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