#1「 再会 」

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「何してる。組みなさい」 ようやくそこでエスコートしようとしているのに気付いて。私はゆっくりゆっくりと彼の左腕に右手を組む。それがスイッチにでもなったかの如く、彼の顔には作り物には見えない、しかし私には分かる、作り物の笑みが浮かぶ。  行こう、と彼は一歩一歩、歩みだした。私も、彼に合わせたような、少しだけ引きつった笑みを見せ歩き出した。  マキタ自動車会長、秋庭工業社社長、東洋みらいグループ会長…、と次々に賢人には声がかかる。私はいつも通り、会釈を繰り返して―――。
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