#1「 再会 」

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 ドガン、とカボチャを切ろうとしてまな板に包丁で叩きつけたような、硬くて鈍い音が、リビングに響いた。それが数度響いた直後、私は頭から血を流してその場に倒れる。  パーティーに出席した翌朝、彼―――賢人は、まるで何かの作業でも終わったかのように私の傍で黒革の手袋を脱ぐと、その場の床に放り捨てていた。まっさらな白い床に、鮮血が私の頭部から流れて。目を閉じたまま微動だにすることもなく倒れている私を見下ろしていた夫、賢人は、軽くため息を吐くと眉根を寄せて機嫌悪気にその場を去って行く。しばしの間の後、玄関口の扉が閉まる音が小さく響き、彼は自宅を出て行った。  どれくらい倒れていただろうか。つけっぱなしにしていたリビングのテレビが朝の天気予報を放送し終えて9時になり、本格的なワイドショーを放送し始めた頃。
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