#1「 再会 」

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 皮でも被っていなければ、シラフではいられない心境だった。彼、柊平は先日ほどきっちりした背広姿ではなかったが、それでも白いワイシャツに黒っぽいスーツを着ており、ブラウンがかった黒髪は丁寧に整えられているのが後ろ姿を見ただけでも分かった。彼は振り返った。 「え?…あ、いえ」 どうもその口調からは、私への親近感は感じられない。かつての私に気づいていないのか。それとも昨日私が「人違いだ」と口にしたことを信じたのか―――。  お世話になったのに何もしないのはおかしい。そう思って、私はキッチンに駆けていくと、食器棚からグラスを一つ取り出した。冷蔵庫を開け、ポットに常備していた冷えた麦茶を取り出すと、グラスへと注いだ。注ぎながら、私の脳裏にはひとつの疑問が湧いていた。
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