#1「 再会 」

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 都内の一等地に構える高級ホテル「東洋ホテル」の8階で、エレベーターから歩み出た私、(ひかり)は夫の賢人(まさと)と腕を組んで歩いて行く。会場前には記帳を求めるスタッフが何人も立っており、やがて私は賢人と並んで氏名を書いた。  受付を済ませた私は、まもなく紺色のスーツ姿の賢人と入室した。入ると少し歩いた先で、賢人の知人と思われる50代半ばに見える男性が、秘書と思われる人物と共に私達に声をかけて来た。 「お久しぶりです、上泉(こうずみ)殿…」 右手を差し出し賢人に握手を求めた彼は、白髪交じりの髪を、バーコードの様に整えた風貌だ。
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