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消えたその日に職場に問い合わせると、いきなり前日に有給休暇を申請してきて二週間は出勤しないと、それしか知らない様子だった。生田の兄である宏紀に電話をしたが、連絡はないと言うので、心配はかけないようにとそれだけで通話を切った。共通の知人にも連絡をしてみたが、誰も何も知らなかった。
それから五日、生田がよく行く店や二人で行った場所など、思いつく限りを探し回ったが、合間に仕事もあるから思うように探せず、情報も得られないでいた。
そんな久世の様子をまるで見ていたかのような物言いと、生田の情報をチラつかせる西園寺に、久世は抵抗を諦めた。
無言のまま通話を切って、マンションのエントランスへ向かう。自動ドアをくぐると、目の前の道路に真っ赤なジャガーが停まっていた。
運転席には見知らぬ人物が座っている。西園寺の車ではないのか?
そう思った瞬間、後部座席のサイドウィンドウが下がり、西園寺が顔を覗かせた。
「乗れよ」
久世は言われるがまま乗り込んだ。
「久しぶりだな」
そう言ってこちらへ向けた西園寺の顔に、久世は驚いた。
「あはは! そんな顔をするな。生きてるんだから」
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