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西園寺の左顔面は火傷の跡があり、端正な顔立ちは半分歪んでいた。
驚きで声を失っている久世を、ニヤニヤとして見ながら西園寺は続ける。
「先に言うが、こうなっても以前と変わりなくお前のことを可愛がることはできる。安心しろ」
そう言って左腕をひらひらとさせた。
半袖のTシャツから伸びるその腕には、肘から先がなかった。
「足は骨折だけで済んだ。運転していた恋人は死んだよ」
久世は悲痛に顔を歪ませて、西園寺から視線を逸らした。
西園寺はニヤニヤとしていた笑みを止め、無言で前を向いた。
車は高級ホテルの駐車場へと入っていく。停車すると、久世は西園寺に促され、車を降りてエレベーターに乗った。
最上階に着いた。エレベーターが開いたそのフロアにはドアが一つしかなかった。
運転していた人物も二人の後ろをついてくる。久世は見ないようにしていたが、チラッと盗み見た限りは女性のようだった。
青味がかったとも言える黒い髪はショートに刈り上げられ、ほっそりとした肢体を革のジャケットとパンツで包んでいる。サングラスも革靴も、上から下まで真っ黒だった。赤く塗られた唇以外は。
部屋に入るやいなや、西園寺はバーカウンターからブランデーをグラスに注いで飲み始めた。
久世にも一つ差し出す。久世はそれを受け取って一口飲んだ。
三人共ここまで無言である。
「さて」
ソファに深々と背中を預けて座り込んだ西園寺が口を開いた。
「どうする? 婚約者同士二人きりにしてやろうか? それとも三人でヤるか?」
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